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〈企画展〉3.11 現場の事実× 心の真実 それでも、下水は止められない。

~東日本大震災・南蒲生浄化センターの知られざる闘い~

せんだい3.11 メモリアル交流館は、東日本大震災を知り学ぶための場であるとともに、津波により大きな被害を受けた仙台市東部沿岸地域への玄関口でもあり、交流スペースや展示室、スタジオといった機能を通じて、より多くの方に震災や地域の記憶を語り継いでいくための場所です。2019 年1 月22 日よりスタートした企画展『3.11 現場の事実× 心の真実 それでも、下水は止められない。~東日本大震災・南蒲生浄化センターの知られざる闘い~』の広報ツール、展示ヴィジュアルのデザインを担当いたしました。

~東日本大震災・南蒲生浄化センターの知られざる闘い~

仙台の東には、果てしなく広がる水平線がある。どこまでも美しい海に向かって、100 万都市の汚水は流れてくる。人間が汚した水を、瀬戸際で清浄に返す場所。あの日、仙台市の下水の約7割を処理する『南蒲生浄化センター』を大津波が呑み込んだ。大災害が起ころうとも、人の営みは続いていく。人の営みがある限り、下水は止められない。機能の多くを失っても、誇りをかけて、仕事を遂げた人たちがいた。被災地の衛生環境を守るため、海を守るため、そこで行われていたこととは。(展示リーフレット:案内メッセージより抜粋)

人間が生きている限り 下水は発生し続ける

南蒲生浄化センターは、仙台港のすぐ南、七北田川の河口に位置しています。処理区域面積10,700.4ha、処理区域人口はおよそ10 万人以上に上る、全国でも最大規模の下水処理施設です。この施設が機能停止したとき、何が起こっていたのでしょうか。私たちの想像力は果たして、そこに及ぶことができていたでしょうか。「人間が生きている限り、下水は発生し続ける」とは当時、南蒲生浄化センターの所長であった石川敬治氏の言葉です。大災害時でも、それは変わりません。大都市の生活を背中に背負い、そこでどんな闘いが繰り広げられていたのか。残されている記録と、当時を知る職員のインタビューから振り返ります。(企画展:展示についての案内より)

それでも、下水は止められない。

10mを超える津波の衝撃を目の当たりにした。このままでは緊急放流ゲートは開放できない。長年使われていない旧第五ゲートなら手動で開けることができるかもしれない。しかし、そこは私たちが避難している管理棟からかなり距離のある海側で、津波警報は解除されておらず、しかも手動のハンドルは直径45 センチに満たないうえ、さび付いて動かないかもしれない。計画は日の出を待ち、使命感に駆られた6 名によって実行され、ともかくの放流を確認することができた。救助された自衛隊ヘリから見下ろせば、どこまでも続くモノクロームの世界。か、と思いきや、東部道路の向こうには色鮮やかな人間世界が広がっていた。「ヤバい!街が活きている!下水を止めるわけにはいかない!」地上四階建て、最も海側に建っている南蒲生浄化センター第三ポンプ場の巨大な壁は、まるで超能力者がボコッと潰したように全面がへこんでいる。旧第五ゲートはそのすぐ脇にあった。「私たちは海を見て仕事をしている」津波を見た職員がつぶやいた。その姿は、100 万都市仙台市民の暮らしを背中に負い、下水を浄化して自然の海に返す仕事への誇りを物語る。新しい南蒲生浄化センターの完成まで、10 年かかると言われたところを4 年で竣工。その間は奇跡と思われる数々の場面があったが、それらは仙台市下水道の歴史が今にして成し得た「裏方の英知」だったのだ。(せんだい3.11 メモリアル交流館:館長 八巻寿文さんのメッセージより)

土木遺産 仙台市煉瓦下水道「杜の都れんが下水洞窟」

企画展デザインに関わらせていただく中でで「杜の都れんが下水洞窟」を見学させていただきました。仙台市内には明治30 年代に築造された、煉瓦づくりの下水道管が3 ヶ所残っています。戦火や震災に耐え現在も使用され続けています。歴史的に貴重なこの煉瓦下水道は、その価値が認められ平成22 年に土木学会選奨土木遺産に認定されています。そのうちの1 つが、青葉区西公園C60 広場(SL 広場)そばの地下に埋設されています。らせん階段で地下8 メートルまで降り下水道管が埋設されている光景は、とても地上からは想像できない仙台市下水道の歴史が広がっています。企画展の空間構成の着想点は煉瓦下水道をモチーフに、あたかも下水管の中を通っているような空間となっています。下水という、どんな人の生活にも関わっている処理施設が被災することの意味、復旧までの職員の方々の思いや、これからの未来へ向けたメッセージ、これらを「現場の事実と心の真実を分かりやすく伝える」ために関わったスタッフ全員で取り組ませていただいた展示です。

Visual design
2019-
内容構成:谷津智里
空間構成:大沢佐智子
デザイン:伊藤典博+ 安保満香
映像:さとうたいち
製作:FAC TORY・K
英訳:Nancy H. R oss
主催:せんだい3.11 メモリアル交流館
共催:仙台市南蒲生浄化センター